2006年4月。
私は「白いおばけのスー」と「マカマカの地球歩き マカマカロシアへ行く」2冊の絵本を出版した後、6年勤務した会社を辞めた。
理由はいくつもあったが一番の理由は、セコム株式会社が「白いおばけのスー」を監修したことで、出版社が貪欲になったことだった。同社とタイアップしてまとまった冊数を買取してもらう手法に味をしめたのである。
さらには、おばけのスーのキャラクター版権料で儲けようとしていた。
作者HILOKOと私は、お金儲けのためにおばけのスーを生み出したわけではない。
スーを使って儲けようとする人間が、どこからともなく集まってきたことに、私たちは辟易したのである。
HILOKOとも相談をして、水面下でセコム広報と連絡を取り、今後のスーの扱いについて綿密な計画を立てた。同社の弁護士にも相談して、スーをセコム専属キャラクターにするべく行動を開始したのである。
私は出版社を退職すると同時に、HILOKOと会社を設立した。
セコム株式会社とのキャラクター契約は個人ではできなかったからだ。
さらには、出版社がスーのキャラクターを使用できないように「白いおばけのスー」の商標登録を行った。
4月に入ってすぐ、会社の人事異動発表があった。
それは青天の霹靂とも言える発表だったのである。
私は出版部からチラシ広告営業部門への辞令を受けた。
つまりは、左遷である。
同僚のYちゃんが、近所の喫茶店に私を呼び出した。
「クビにする理由がないから、どうでもいい部署に左遷して、給料減らして自己都合で辞めさせるためですよ」
「わかってるよ、そんなことくらい。営業部がセコムさんと話をするのに、私がいると邪魔だから飛ばそうとしてるんだよね」
「どうするんですか? スー、取られちゃいますよ」
「汚い手を使うことくらいとっくにわかってたから、もう段取り付けたのよ。私とHILOKOで、会社作るの」
「え? 会社?」
その後、会社の不当な扱いにより、退職せざるを得なかったことを公共職業安定所に直訴。必要な証拠書類を集めて、労働基準法に違反していることを訴えた。私の訴えは認められ、私が出した条件を会社に認めさせたのである。
HILOKOが描くピュアなおばけのスーを、金儲けのために汚したくなかった。
子どもの安全を願って企画した絵本、そこに登場するスーは、セコム株式会社の安全・安心を目指す精神を体現するものだ。
決して、儲ける手段ではない。
私は会社設立とともに、千葉県船橋市から、神奈川県横須賀市へと引っ越した
気持ちもあらたに、新天地で事務所兼自宅の古い一軒家へと、私と母、そしてお嬢DONとみつ子と一緒に引っ越したのである。
To be continued……