プザンという名のアムールヒョウ
サンスター文具株式会社の初のオリジナルキャラクターの販促ツールとして企画された絵本制作は、私の原点・アフリカ・ケニアとアムールヒョウの出会いで、絶滅危惧種の動物たちを救う目的に変わっていた。
作者・神尾由里子氏が描く動物たちは、平和で優しく、ほのぼのとした癒されるキャラクターだった。
しかし、私がずっと伝えたかった野生動物の生命の輝きを、マカマカと仲間たちのキャラクターに投影したのである。
それはもしかすると、私のエゴだったのかもしれない。
可愛くて優しいキャラクターに、絶滅危惧種という重いテーマを背負わせてしまったのかもしれない。
しかし、NHKスペシャルで、プザンという名のアムールヒョウを見たときに、私の気持ちは決まってしまったのだ。
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渋谷のNHK社屋で、私は番組制作局 科学環境番組部チーフディレクターの小林達彦氏を待っていた。
廊下の奥から現れた小林氏は、がっちりとした体格のスポーツマンのような印象。
小林氏は、2005年以前にもアムールヒョウの番組を制作していて、それを元にした書籍も出版していた。
私は絵本企画の説明をして、WWFジャパンの監修を得たこと、メインはアムールヒョウであることなどを話した。
そして、神尾氏が描いたプザンの絵を見せた。
小林氏は、食い入るようにプザンの絵を見ていた。
「アムールヒョウを題材にした絵本は、おそらく初めてのことだと思います。我々が制作したドキュメンタリーがきっかけで絵本になるなんて、こんな嬉しいことはありません。ぜひ協力させてください。私は1990年にアムールヒョウを初めて取材した時、なんとかして救いたいと思っていました。あれから15年。今はもう絶滅の淵を歩いています。この現状を一人でも多くの人たちに伝えてもらいたい」
小林氏は静かに語った。
こうして実在のアムールヒョウ・プザンを、絵本に登場させる許可をもらったのである!
*プザン本人に許可をもらったわけではないが🤣
私はここでもう一つの山を越えようとしていた。
「このドキュメンタリーのバックで使われていた音楽ですが、これは誰の曲なんでしょうか?」
「これは、この番組だけのために作曲してもらった劇伴奏曲です」
「え? このドキュメンタリーのためだけの曲だったんですか! どおりで感動的な曲だと思いました。実は…、この絵本に音楽CDを付けたいと考えていて、ドキュメンタリーで使われていた曲を何曲か使わせてもらうことができるでしょうか?」
私は書籍企画を始めた時から、絵本と音楽のコラボレーションに挑戦するのが夢だったのだ!
そのチャンスが巡ってきた、そう直感したのだった…。
To be continued……