カトウくんのおまけ
玩具デザイナー 加藤裕三の世界 吉田 光夫著
タイトル決定、発行日は7月下旬。
そして、有馬玩具博物館のオープンに合わせて、館内で販売することも決まった。
私は最終校正作業とともに、書店営業、チラシ制作、博物館のオープニング準備を手伝った。博物館は加藤氏の悲願でもあったし、その日に合わせて出版できたことの感動を今も思い出す。
有馬玩具博物館の構想は、加藤氏と友人でありライバルでもあった玩具デザイナー、西田明夫氏(2009年2月に他界)と進めてきたもので、西田氏は玩具博物館の館長を務めた。
私は博物館オープン前日に有馬入り。西田氏の指示のもと博物館の展示物を並べたり、雑用をこなした。
深夜をすっかり回り疲労もピークに達していた私は、ここが温泉地であったことを喜んだね。温泉に入って身体の疲れがスーッと消えていき、心まで洗われるような気持ち良さだった🥰
*木のプロタイプから完成させるまでの工程を再現したもの
2003年7月19日。
有馬玩具博物館がオープン!
しかしながら、私はこの時のことを断片的にしか思い出せない。博物館入口で、ひっきりなしに訪れるお客さんに、書籍販売をしたことと、前日の準備の光景だけが鮮やかに思い出せるのだ。
*2003年当時に復刻販売された木のおもちゃシリーズ。現在は販売されていない
ひとりの芸術家の50年の人生を追いながら、制作した書籍「カトウくんのおまけ」は、企画から1年の歳月を経て完成したのである。
途中、私の都合で制作延期になったこともあったが、長い時間をかけて丁寧に制作した書籍だった。
加藤裕三の軌跡は、一般人の何倍もの足跡を残していて、それらを追いかけるだけで時間が重なった。多くのことを体験し、経験し、企画し、そして多くの人々に影響を与えていったのである。
*「カトウくんのおまけ」内で紹介した加藤裕三の紙焼き写真
書籍はすでに絶版になっているが、Amazonや古本屋で見かけたら、読んでいただけたら嬉しい。
木工から始まり、木のおもちゃ作り、遊具の制作、からくりのおもちゃ、そしてグリコのおまけデザイン、さらには、アフリカへ旅立ち、そして有馬温泉にたどり着く。私が取材して感銘を受けた加藤裕三の姿は、ほんの一瞬の姿に過ぎない。しかしその一瞬に心を奪われ、こうして私は加藤裕三の書籍を企画することになったのである。
*上の3点は加藤裕三のグリコのおまけ復刻版「ToyBox of Glico」(SONYクリエイティブプロダクツ)おまけよりも数倍大きくして、加藤裕三のデザインを忠実に再現した動くおもちゃ(2003年当時に発売されたので現在は販売されていない)
インタビューで登場する人たちも同様に、加藤氏と出会い意気投合し、それぞれの言葉で語る。私にとっては、こんな加藤さんの顔があったんだ!と驚きの連続であった。
そして、この書籍が新たな種を蒔き、さらに進化して私と関わっていく。
この時はまだそんな事態になろうとはつゆ知らず、有馬玩具博物館の入口で、私は汗だくになって本を売っていたのだった…。
To be continued....