I LOVE MY LIFE −猫とROCKと愛の日々−

2022年11月から1年に渡って還暦ブログをほぼ毎日更新、2023年11月からは海外ドラマ「Kommissar REX」そして、REXドラマの🇨🇦版/🇮🇹版のレビュー記事。それ以前は海外ドラマ「Kommissar Rex」全編のレビュー記事です。

Faraway, so close Making of MIKAERI-NIPPON ③

 

不法侵入容疑!

 

2002年2月。

編集者として、初めて制作した書籍見返りにっぽんの撮影のため、愛知県岡崎市のZEROファクトリーを訪れた私、スタッフFちゃん、そしてカメラマン野口氏。

早速、この書籍のメインの人物、Harley Davidsonのカスタムビルダー・木村信也氏と撮影場所の打ち合わせとともに、ロケハンに出かけた。

 

木村氏が案内してくれたのは、八丁味噌で有名なカクキューの工場。江戸時代から続く宮内省御用達の由緒正しき老舗だ。



www.kakukyu.jp

 

この工場内には巨大な味噌樽が並べられていて、粋な風景だと木村氏が言う。

何度か訪れたことがあるというので、私たちは木村氏に案内されて工場内に入った。

なるほど、黒塀に囲まれた工場は見るからに重厚で凛としている。

 



「素晴らしいですね!」

 

東京では見たことのない広々とした空間に、大きな樽がゴロゴロしている風景に、私たちは感嘆する。

 

「このあたりとか、いいですよね」

 

カメラマン野口氏も目を輝かせて言う。

 

 

 

Fちゃんは、そのあたりをデジカメで撮影していく。

私たちが工場内にずんずん入って、キョロキョロと眺めまわしていると、何やら不穏な空気が流れていることに気づいた。

工場で働いている白衣を着た人たちが、私たちを不審な目で見ている。

すると、遠くから誰かが私たちの方へ、血相を変えて走って来た。

 

「何ですか! あなた方は! どこから入ってきたんですか?」

 

「は? えーと、その裏門から…」

 

「許可取ってますか?」

 

「え? あの、私たち出版社のもので、ここで撮影を…」

 

「そんな話、聞いてませんよ!  勝手に敷地内を撮影して! あなた方、不法侵入ですよ!」

 

「いや、そんな、あの、私たちは怪しいものでは…」

 

「とにかく、事務所まで来ていただきましょう!」

 

「………」

 

ヤバイ。不覚だった。

ここは由緒正しき老舗の工場。

アポ無しで勝手に入るなんて言語道断だ。

私は取材ルールを全く無視していたことに、今頃気づいたのだ。

それまでの元気も何処へやら、肩を落として社員の方の後ろに付いて歩く私たち。

 

「原田さん、ゴメン。前はさ、普通に入っても全然平気だったんだよね。マズイよね。僕が頭下げて謝ってくるから」

 

木村氏は申し訳なさそうに言う。

 

「いや、大丈夫です。この企画の責任者は私です。私のミスでした。なんとか予定通り撮影させてもらうように説得しますから、皆さんはここで待っててください!」

 

こうして私は、社員の男性に促されて事務所に入り、そこで険しい顔で待っていた部長さんと対峙したのだった…。

 


To be continued....