目標に向かって突っ走っていると、周りが一切見えなくなることがある。
自分を100%信じて疑わずに、ただひたすら頂点を目指している。
その時、法を侵しているかもしれないことにも気づかず、走り続ける。
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2002年2月、愛知県岡崎市。
木村信也氏が手がけるZEROハーレーの撮影場所を、八丁味噌の老舗・カクキューの敷地内でロケハン中、私たちは不法侵入者として社屋に連行された。
謝罪及び経緯を説明するために、部長室に入る私を、カメラマン野口氏や木村氏、スタッフたちが不安そうな顔で見つめていた。
「大変申し訳ありませんでした! 許可も頂かずに勝手をいたしましたこと、本当に申し訳ありません!」
私は、部長が言葉を発する前に謝罪し、頭を下げ続けた。
「いや、もういいですから、とにかくどういうことか説明していただけますか」
私は「見返りにっぽん」書籍企画の経緯を事細かに説明し、ハーレーのカスタムビルダーのカリスマ的存在である木村信也氏のオートバイを、敷地内で撮影させてほしいこと、そして、撮影場所として木村氏からここを指定されたことや、この企画のメインの写真になるため、ここでなければ意味がない、この場所が重要なのである、どうしても撮影させてほしい、と懇々と説明し続けた。
そして…
カクキューの部長は、私のしつこい説明🤣と熱意🔥に負けて、撮影許可をくれたのである🙌
「本来ならスケジュールをきちんと組むべきですが……、明日の午前中だったら見学客が来る前に、何とかできるでしょう。ただ、撮影不可の場所もありますし、これから工場内を案内させましょう」
険悪なムードで始まった部長室での謝罪は、部屋を出る頃には暖かい空気に変わっていて、不安げな表情で待っていたみんなに、私はガッツポーズをしてみせた!
息を吹き返した私たちは、キビキビと工場内をチェック。江戸時代から現存する土壁に案内された時には、皆、ため息を漏らした。
そして翌日。
カクキューでの撮影は順調に進み、立ちはだかった大きな壁を乗り越えた感があった。
今、思い返してもまったく不思議な出来事だった。私はこれまで何度も取材記事を書いてきたにもかかわらず、カクキューの工場に許可を得ることを全く無視して進めていた。それなのに、あの日、あの場で、撮影を無理やり許可させてしまった。
あの傍若無人的なエネルギーは何だったのだろう?
木村信也氏のハーレーに惚れこみ、日本の粋な風景に溶け込む芸術的でありながら、オートバイとしての機能も重視したハーレーダビッドソン。この存在をオートバイだけの世界から芸術の世界へと、舞台を移して伝えたかったのだ。
果たして、その目論見が成功したかどうかは定かではないが、少なくともカクキューでの撮影は、その一端を表現できたのではないかと自負している。
ここからは、カメラマン野口賢一郎氏が撮影したZEROチョッパーの写真を列挙する。
誌面の制限でボツにした写真、江戸時代の壁の前での写真や、前回の冒頭の写真がそうだ。
思い出深い、撮影シーンが蘇る。
編集者として、この本に携われたことを誇りに思う瞬間だった…。
To be continued…