I LOVE MY LIFE −猫とROCKと愛の日々−

2022年11月から1年に渡って還暦ブログをほぼ毎日更新、2023年11月からは海外ドラマ「Kommissar REX」そして、REXドラマの🇨🇦版/🇮🇹版のレビュー記事。それ以前は海外ドラマ「Kommissar Rex」全編のレビュー記事です。

Crime of Love ケニア編⑤

私の原点・30年目のケニア

第4回 アフリカゾウ VS 鉄の塊

 

私はこのケニア旅行で、どうしても見たい動物がいた。

 

クロサイだ。

 

すでに30年前でケニアでの生息数が2万頭から400頭に激減、現在もレッドリストCR(近絶滅種)に分類されている。

 

私は、サファリ初日からクロサイに会いたいと、Mr.Mishackにしつこく伝えていたので、彼も何とかしてクロサイを見つけようと必死だった。しかし当時、マサイマラ国立保護区には数十頭という現状、会えれば「奇跡」と言われていた。

 

Mr.Mishack と 私



 

その日、Mr.Mishackは奇跡を求めて、いわゆるけもの道に入り込んだ。

鬱蒼とした樹々、サファリカーの両サイドが枝で擦れて、キィィィ〜〜と音を出している。どんどん道が狭くなる。前方は木の枝ばかりになり、くねくねと曲がりくねって、目の前の状況が確認できない。

 

いつもはおしゃべりで快活なMr.Mishackも、この時ばかりは、黙りこくっていた。

私はと言えば、『これはかなりヤバい』と、気が気ではなかった。

 

案の定……。

 

私たちの目の前に、突如、アフリカゾウの群れが現れたのだ!

 

!!!!!!えっ? ちょっと!

どこから来たの!

 

大人のゾウが3頭、子どもが2頭くらい、赤ちゃんゾウが1頭。(だったと思う。あまりの衝撃で記憶が曖昧…)

 

Mr.Mishackはエンジンを切って、だまって目の前のゾウを見つめる…

 

突然!

先頭のリーダーゾウが、耳を大きく横に広げ、鼻を高々と上げ、

 


パオーーーーーーーー!

パオーーーーーーーーー!

パオーーーーーー!

 

と、もの凄い声で吠えた! 

さらに、片足を上げ、

 

ズドン!ズドン!

ズドン!ズドン!

 

と、地面を踏み鳴らしている!

 

こだまする巨大な声。

地響きで揺れるサファリカー。

心臓がバクバクして金縛りになる。

 

アフリカゾウが怒っている。

私たち人間に怒っている。

けもの道に勝手に入り込んだ、人間に怒っている!

家族を守るための威嚇。

 

リーダーはサファリカーの真ん前に立ち塞がって、私たちを睨みつけていた。

 

Mr.Mishackは、静かにエンジンをかけ、ゆっくりゆっくり、ゆっくりゆっくりと、バックする。

リーダーは、サファリカーがバックすると同時に、フロントガラスに顔を押し付けるようにして、前進する。

後から子どもたち家族が続く。

 

ようやく、ゾウとサファリカーがすれ違える道幅になったところで、Mr.Mishackはエンジンを切った。

 

アフリカゾウの群れは、サファリカーの横を通り過ぎていく。

私はガラス越しに超接近したアフリカゾウたちの顔を見た。

ゾウたちは、私たちに目もくれず、ゆっくりと通り過ぎた。

カメラを持つ手が震えて、シャッターを切ることが出来なかった。

 


怖かった…。

 


冒頭の写真は、だいぶ遠くに離れた段階で、望遠で撮影したリーダーだ。

こちらは若いアフリカゾウ

 



 

サバンナでは、サファリカーは単なる鉄の塊だ。

そこで精一杯生きている彼らとは、同じ舞台には立てない。

だから彼らはサファリカーを無視するし、脅威とも思ってない。

ましてや、鉄の塊の中にいる人間なんか、どうでもいい。

 

だがあの日、私たちはアフリカゾウと同じ舞台に立ってしまったのだ。

子どもたちを守るために、必死に威嚇をするリーダーの凄み。命を張って生きる彼らと、人間は同じ舞台に立っちゃいけなかったのに、偶然迷い込んでしまったことで、私は人間の愚かさを目の当たりにしたのだ。

 

人間は、なんてちっぽけな生き物なんだろう。

鉄の塊から放り出されたら、数時間ももたない命。

 

人間なんて、塵みたいなもんだ

 

 

そんなささやきが、アフリカゾウたちから聞こえたような気がした…。

 


To be continued…