2003年にLANAが逝ってしまったあと、家にはお嬢DONとみつ子の2匹になって、寂しい日々がしばらく続いた。
船橋の一軒家は2階建。吉祥寺では平屋だったので、2階に登る階段が2匹にとって初めてのこと。みつ子は登ったり降りたりを繰り返し、お気に入りだった。
お嬢DONも歳の割には元気で、日当たりのいい時間は2階で過ごした。
LANAが居なくなって、みつ子が少しずつ私に甘えるようになったのは、今考えると、みつ子はLANAに遠慮していたのかもしれない。図々しい性格のようで、実は繊細な精神構造だったんだね。
私の膝の上に乗っかるようになったのもこの頃だ。
これまで一度も私の膝に乗っからなかったみつ子。
2階の部屋で私がiMacに向かって仕事をしていると、必ず膝に乗っかる。
キーボードを打つと肘がみつ子の頭にぶつかるので、みつ子のイスを用意して隣に座らせるようにした。
みつ子は、自分専用のイスにお座布団を敷いてもらって、大満足。
私が2階に行こうとすると、私を追い抜き階段を登り、上で振り返って私を待つ…。
うーん、この光景、どこかで見たような…。
そう、中野坂上のコインランドリーだ!
みつ子は「自分だけ」にできることが、すごく嬉しかったようで、私が家に帰ると、ほとんど2階の部屋で過ごした。
ある日、私が帰宅してiMacの前に座ると、いつものように自分のイスにぴょんと飛び乗って、お座りしようとした途端、グラッと体勢を崩して落っこちそうになった。みつ子のイスは黒いパイプイスで軽くて不安定だ。
「何やってんのよ…猫のくせにフラッとしちゃって」
私はみつ子を抱き上げて、しっかりとお座りさせた。
みつ子も、何事もなかったように毛繕いを始めた。
しかし…。
これが、始まりだったことを、この時の私は知る由もなかったのである…。