2003年2月12日。
LANA永眠。推定 12歳。
LANAとの別れは唐突に突然やってきた。
その日まで、元気に食べていたのに。
そんな素ぶりをこれっぽっちも感じさせなかったのに。
静かな冬の夜、別れは突然やってきたのである。
LANAの大腸癌は、2002年11月の手術で癌腫瘍を切除できず、森下動物病院の院長先生の見立てで、漢方薬での治療に決まった。
思った以上の効果があり、LANAは元気な頃と変わりないほど何でも食べられるようになり、嘔吐も下痢もしなくなったのだ。
明けて2003年、冬の寒さから時々風邪をひくようになったが、回復するといつものようにモリモリと食べる。
このままLANAはすっかり完治するものだと信じていた。
2月10日。
寒い日だった。
少し元気がないLANAを、お嬢DONとみつ子は囲むように真ん中にして、ストーブの前でまったりしていた。食欲はなかったが、嘔吐をすることはなかった。
この日は定期検診の日だったが、病院に電話して延期してもらうことにした。
2月11日。
体調は回復に向かってご飯を食べられるようになった。
午後にはいつものLANAに戻っていた。
祝日だったのでLANAと一緒にいることができ、LANAも嬉しそうだった。
夜になり底冷えがしてきたので、私はLANAを2階の部屋に運んで一緒に寝ることにしたのだ。
すでに階段の登り降りは危なかったので、1階の母の部屋で過ごすのが常だった。
ご飯もトイレも1階で安心だったし。
しかしあまりに寒かったので、母に任せておけないと直感したのである。
LANAのベッドを作って、すぐそばに寝かせた。
私はLANAの様子を見ながら、なかなか寝付けなかった。
何時頃だったか、うとうとした頃。
突然、ゲホっゲホっと咳き込む声がして、私は飛び起きた。
「ラナ! どうした? 大丈夫か?」
私は部屋の電気を付けて、LANAを抱き上げた。
LANAはゼェ〜ゼェ〜言って、苦しそうにしていた。
「よしよし、大丈夫、大丈夫」
抱っこしながら、LANAの背中をさすった。
LANAの身体から、少しずつ力が抜けていくのを感じて、私は叫んだ。
「ラナ? ラナ! ラナ!」
シンとした空気の中で、LANAは静かに息を引きとった。
深夜3時を回っていた。
ただただ、静かな夜だった。
外が明るくなるまで何をどうしていたのか、まるで記憶にない。
私は、森下動物病院に電話をして、LANAが亡くなった状況を伝えた。
院長先生は、驚いて言った。
「え? 苦しんだのは15分くらいだったんですか? 信じられません。この病気の最後は、可愛そうなくらい苦しんで大変な状態で亡くなるのが普通なのに、静かに亡くなったんですか…。奇跡ですね…」
そうなのだ。
LANAが苦しんだのは、ほんの一瞬だった。
まるで光に導かれるように旅立ったのだ。
今、確かに思う。
LANAの12年間は、幸せだったに違いない。
そして、それ以上に私たちに幸せを与えてくれた。
悲惨な最後を見せることなく、元気な姿のまま、一瞬にして旅立った。
江戸っ子LANA。
サビ猫LANA。
たくさんの愛をありがとう。
また、会える日まで。
To be continued .....