I LOVE MY LIFE −猫とROCKと愛の日々−

2022年11月から1年に渡って還暦ブログをほぼ毎日更新、2023年11月からは海外ドラマ「Kommissar REX」そして、REXドラマの🇨🇦版/🇮🇹版のレビュー記事。それ以前は海外ドラマ「Kommissar Rex」全編のレビュー記事です。

Believe 船橋編⑧

 

手術の夜。


LANAが大腸癌であることが判明したのは、2002年11月初旬だった。

癌細胞を切除して腸を繋ぐ手術をすることになり、その日の夜が来た。

 

 

neocats.hatenablog.com

 


私は会社を早退して、夕方には自宅に到着した。

それから、夜8時30分には病院に着くように準備をした。

暗くなってから病院に行くのは初めてだったからか、不穏な空気に包まれた家の中で、当然、LANAも何かを察知していた

キャリーに入れる時、大抵は大騒ぎをして抵抗するのだが、具合が悪い時はむしろ自分からササっとキャリーの中に入る。

元々、頭のいい子だったから、無駄なエネルギーは使わないのだ。

しかし、自転車の後ろに乗せて走り出すと、決まって大騒ぎをしていた。

自分の意思ではない動きに我慢ならなかったのだろう。


しかし、この日は違った。

緊張する私の気持ちが伝わったのか、LANAは自転車の後ろで押し黙ったまま揺られていた。

暗い道をただひたすら自転車を漕ぐ私の後ろで、尋常ではない空気を嗅ぎ取っていた。LANAがキャリーの中でどんな気持ちだったのか想像するだけで辛くなる。


「さぁ、着いたよ〜」


自転車から下ろして、森下動物病院のドアを開けた。

すでに閉院しているので、待合室はシ〜ンとしている。


「少しお待ちくださいね、今、準備していますから」


受付の方が言った。


思えば、避妊手術を除けば、外科手術を受けたのはLANAだけなのだ。

BOSSもTSUNも投薬治療だったし、みつ子は幸い手術はしなかった。

LANAは、複雑骨折の手術もして、大腸癌の手術。

こんな小さい体で、二度も手術をするなんて、不憫で仕方なかった。

 

LANAは抱っこすると脱力してぬいぐるみみたいだった



院長先生がブルーの手術用の着衣で現れた。

私はLANAをキャリーから引っ張り出した。

抱っこして、先生の腕に渡した。

先生は、肩に乗っけるようにLANAを抱き上げて、手術室に入って行く。

その時のLANAの姿を思い出すと今でも涙が出る。


「ミャ〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん!」


それまで一言も発しなかったLANAが、全身から声を振り絞って、先生の肩越しに、片方の手を私に向かって、思いっきり伸ばして訴えた!

まん丸の目を見開いて、私に向かってないている。


「大丈夫、大丈夫だからね!」


私はそれしか言えなかった。

先生とLANAはドアの向こうへと消えていった。

そして、小さくLANAの声だけが響いていた。

 

*****************

 

「ちょっと、いいですか?」

 

先生が手術室から出てきて、私を呼んだ。


「はい」


「ラナちゃんのお腹をちょっと見ていただきたいんです。でも、こういうのが見られないというのでしたら、あとで説明しますが」


「いいえ、大丈夫です、見られます」


「そうですか、じゃ、こちらへ」


LANAは全身麻酔で寝ていた。お腹が開いて内臓が見えていた。

私は動揺することもなく、普通に見ることができた。


「これが、癌です。手術を決めた時はこれほど大きくなかった。ですから切除する方向でお話ししましたが、ここまで大きくなっていると切ることができません。他の臓器にも影響してしまいます。残念ですが.......このまま閉じます」


「わかりました」


LANAの癌細胞は、ゴルフボールほどの大きさになっていた。

あんなに大きなものを、小さなお腹に抱えていたとは、どんなに苦しかっただろう。しかし、あの状態では何もできないという先生の説明にも納得がいった。

あれではお腹の内臓を全部取ってしまうようなものだ。


手術は失敗、いや、打つ手なし。


私は、癌の恐ろしさを知った。

LANAが食べたものを横取りして、栄養をつけてどんどん成長していった癌。

小さなLANAの体に取り付いた悪魔。

この先、どうしたらいいのだろう。

このまま、癌に命を与えるのか?

LANAの命を横取りさせていいのか?


私は、待合室で悶々とした。


LANAの麻酔が切れて意識がもどった頃、無事であることを確認して、

私はひとり、がむしゃらに自転車を漕いで家に帰った…。

 


To be continued......