冒頭の写真は、目黒時代のTSUNとBOSS。昨日、写真の整理をしていたらやっと出てきた。2匹が仲良しだった唯一の証拠写真。しかもカメラ目線!BOSSはお兄ちゃんが大好きだったんだよ。顔の大きさの対比が笑える🤣🤣🤣
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さて。
1994年は、Hが起業した会社を手伝いながら、一緒に旅行に行ったり、平穏な日々を過ごしていた。Hはアメリカでプロとして活躍したクラウンのキャリアを生かし、カルチャースクールや、クラウンを派遣する仕事など手掛けた。私はその補佐役、クラウンのマネージャーをやったり、クラウンたちのキャラクターグッズを企画したり、毎日が充実していた。
しかし、幸せな時間は長くは続かない。
突然、奈落に突き落とされる。
BOSS、失踪。
11月末、Hの両親と4人で温泉旅行に行く計画を立てていた。猫たちの世話はHの妹さんに頼んでいた。
ところが、出発前夜から、BOSSが帰ってこない。そんなに長時間、外で遊ぶこともないのに、だ。
私たちは、近所を周って探したり、猫を飼ってる人にも訪ねてまわった。
結局、旅行は中止。
BOSSをそのままにして旅行になど行けるはずもない。
次の日も、次の日も、私たちは探してまわった。
市役所に電話して、保護されてないか、あるいは交通事故にあってないか。
ポスターを作って、近所に何枚も貼った。こんなところまで行くだろうかと思うほど、遠くまで貼りに行った。
BOSS失踪、2週間経過。
Hは、タウン紙に猫失踪の記事を依頼した。
そして…。
リリリリリリン!
リリリリリリン!
電話!
Hが電話に飛びついた。
「白い猫が家の近所によく来るって!ご飯もあげてるって!BOSSかもしれないから、見に来てって!」
私たちは、タクシーに乗り込み、その人の家まで急いだ。
結構離れた場所で、こんなところまで行くだろうか?とも思ったが、BOSSであってほしい、と祈る気持ちだった。
連絡をくれた女性が、「いつも夕方にひょっこり来るんですよ。そろそろ来るんじゃないかな」
私たちは、その白い猫が来るのをじっと待った。
「あ、ほらほら来た。あの白い猫! あの子じゃないですか?」
「あ……」
私たちは、その白い猫を見て、落胆した。
BOSSじゃない。
私は涙が出そうだったが、連絡してくれた親切な彼女に申し訳なくて、我慢した。
私たちは、ガックリしながら家に帰った。
12月半ばの寒い夜だった。
BOSS失踪、1ヶ月経過。
私とHは、会話もなくして、笑うこともなくなった。
2人とも、あきらめかけていた。
どうか、どこかで生きていて。
誰かに拾われて、生きていてくれたら。
それだけでいい。
失踪してすぐに貼ったポスターは、もうボロボロになって、色も褪せて。
時の経過が悔しくて。
どうして? どうして?
クリスマスも、大晦日も、無情に過ぎた。
明けて1995年、お正月も何も、私たちには関係なかった。
灯が消えてしまったような家。
BOSSがいかに大きな存在だったかを思い知った。
Hは食欲もなくなり、私は料理をするのも億劫になっていた。
それでもHは仕事をしなければならず、クラウンという人々を笑わせる仕事だけに、きっと泣きたいくらい辛かっただろう。
私は、あきらめながらも毎日の日課になったBOSS探しに出かけた。
ボス〜
ボスくん〜
名前を呼びながら、空き地の隙間や、家の軒下や、狭いところや、ごちゃごちゃしたところに隠れていないかと、探し回った。
私は、空を仰いだ。
どんよりとした厚い雲、冬の空。
どうしてですか?
神さま、どうしてですか?
どうして、BOSSに会わせてくれないのですか?
神さま、お願いだから、
BOSSに会わせてください。
BOSSに会いたい…。
私は泣いた。
BOSS失踪、40日経過…。
To be continued.....