I LOVE MY LIFE −猫とROCKと愛の日々−

2022年11月から1年に渡って還暦ブログをほぼ毎日更新、2023年11月からは海外ドラマ「Kommissar REX」そして、REXドラマの🇨🇦版/🇮🇹版のレビュー記事。それ以前は海外ドラマ「Kommissar Rex」全編のレビュー記事です。

Crime of Love 大宮編⑦

 


冒頭の写真は、新小岩時代のLANA。

子育てが終わった頃。甘えん坊の表情になってる😊

 

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BOSSの失踪事件

この顛末は、今も涙が溢れて止まらなくなる。

そして、のちに私の生き方を変えることになった出来事だ。

 

 

neocats.hatenablog.com

 

 

1995年1月、BOSS失踪40日。

 

冬の曇り空を仰ぎ、神に祈った私は、泣きながらまた歩き始めた。

BOSSの名前を呼びながら、いつもの道を歩く。

電信柱に貼ったBOSS失踪のポスター。横目で見ながら、私はふと思った。

 

今日はこっちに行ってみよう

 

これといって特別な理由もなく、私は別の道を歩き始めた。

左右、上下を慎重に見ながらゆっくり歩く。

見慣れた住宅街。

いつもの路地。

 

一軒の家のブロック塀を、薄汚れた灰色の猫が歩いていた。

私はその猫を見て、その家の前を通り過ぎた。

 

 

 

薄汚れた灰色の猫をチラッと見た時、水色の首輪が見えたような気がした。

私は、そのまま後ろ向きに歩いて、さっきの家の前で止まった。

 

薄汚れた灰色の猫は、まだブロック塀の上にいた。

痩せこけて、顔が傷だらけで、目が半分開いてない。

 

でも、あれは…

見慣れた水色の首輪。

革製の水色の首輪だ!

もしかして、

 

 

「ボス? ボス! ボスー!」

 

私は大声で叫びながらブロック塀まで走った。

灰色の猫は、私の顔を見るなりブロック塀の上で方向転換して、必死に逃げようとしている…しかし脚がふらつき、ブロック塀から脚を踏み外した! 

私は駆け寄って、前脚をグッと掴んだ。

 

 

シャーッ‼︎‼︎

ギャー‼︎‼︎

 

 

パニックになる猫。

力任せに暴れるから、痩せ細った前脚が折れそうになる。

 

BOSS、私の顔を忘れたのか?

でも、首輪は確かにBOSSの首輪だ。

痩せた首にぶらぶらと揺れている。

 

私は構わずブロック塀から引きずり下ろし、抱きかかえてその家のチャイムを押し続けた。

 

助けてください!

開けてください!

すみません、

開けてください!

 

私は無我夢中でドアを叩いた。

中から、血相を変えた奥さんが出てきた。

 

「すみません、この猫、私がずっと探してた猫なんです。家から籠を持ってきますから、ちょっとだけこの猫を玄関に入れておいてもらえますか!お願いします!」

 

私は奥さんの返事も聞かずにドアをバタンと閉めた!

涙で顔がぐしゃぐしゃになっていた。

 

私は走った。

全速力で家まで走った。

籠を持って、また走った。

 

ここは、家から2ブロック先の近所の家だったのだ。

 

「すみません!本当にすみません!」

 

私は泣きながら謝った。

下駄箱の下に潜り込んで頑なにしている猫を、私はそーっと引っ張り出して、籠に入れた。

 

「あとで改めて伺います。これから病院に連れていきます!」

 

私は走った。

大通りまで、走った。

タクシーを捕まえてダクタリ大宮病院まで。

 

T先生はすぐに診てくれた。

体重は3キロ、失踪した時の半分以下だ。

脱水していたので点滴、とにかく衰弱しているので、いきなりご飯も食べられないだろうから、液体の栄養剤をスポイトで飲ませるように言われて、家に連れて帰った。

 



塀の上を歩いていた灰色の猫。

それがBOSSだと気づかないほどに、変わり果てた姿だった。

 




これらはHとの感動の再会。

BOSSは家に帰って、記憶が戻ってきたようで、Hに抱かれて安心しきった顔になった。

でも、本当は辛くてあまり見たくない写真だ。

 

 

BOSSは失踪中、誰かにご飯をもらうことも、獲物をとって食べることもできなかった。

胃の中は空っぽだったのだ。

しかし太っていた分、40日間を耐えることができたのだろうと、T先生は言った。

 

 

この日のことを、私は鮮やかに覚えている。

空を仰ぎ神に祈り、もうBOSSを探すのは嫌だと私は懇願したのだ。

そして、なぜかいつもとは別の方向へ向かうのだ。そのあとすぐに塀の上の猫に気づく。

もしあの日、私がいつもと同じ道を歩いていたなら、BOSSを発見できなかった。そして、BOSSは死んでいたかもしれない…それほどに衰弱していた。あと数日、生きるか死ぬかの境界線を彷徨っていた。

 

 

神は、私の叫びを聞いたのだ。

BOSSの叫びも聞いたのだ。

 

 

BOSSは12月の中旬頃から、あの家の近所の屋根の上や塀の上でウロウロしてたという。

すぐそばの電信柱に貼ったポスターは、いつも見ていたのに、同じ猫だと思わなかったと、あの家の奥さんは言った。

 

確かに。

あのふっくらとしたBOSSの姿とは似ても似つかない姿だったもの。

 

 

とにかく。

BOSSは帰ってきた。

40日間の放浪の末に。

何があったのか、神とBOSSしか知り得ないこと。想像もできない何かがあったのだろう。

 

暗くて長い長いトンネルを、ようやく抜けた私とHだった。

 

 

そして。

1月17日、阪神淡路大震災

 

私たちの生活が大きく変わる出来事だった…。

 

 

To be continued…