私の原点・30年目のケニア
第9回 大地と生命の調和
野生動物を題材にしたドキュメンタリーで、私が多大な影響を受けた、2005年放送のNHKスペシャル『絶滅から救えるか アムールヒョウ ロシア沿海地方の森』は、静かに淡々と事実を真っ直ぐに捉えて伝える素晴らしいドキュメンタリーだった。
登場するアムールヒョウの姿、表情、すべてを悟っているような目……、ナレーターの言葉はいらないほどに、その真実を語っていた。
このドキュメンタリーをきっかけに、私は絶滅危惧種の動物たちを主人公の絵本シリーズを手がけることになる。
そしてベースとなったのは、言うまでもなくアフリカ・ケニアへの旅。
今回は、私にケニア行きを決意させた張本人の紹介だ!
それは、ヌー(Gnu)。
またまた地味な草食動物って🤣思わないでね。
ウシ科のヌー属。
とにかく顔がオヤジ臭い😅。
赤ちゃんもメスもあごひげがあるから、み〜んなオヤジに見えるという愛嬌のある動物だ🤣🤣🤣
1989年、NHKのドキュメンタリー「地球ファミリー-サバンナの一日 ケニア・マサイマラ国立保護地域-」で、岩合光昭さんがヌーの川渡りを生中継する番組があった。
ヌーは年に一度、ケニアのマサイマラ国立保護区からタンザニアのセレンゲティ国立公園へ移動する。草を求めて移動するのだが、ケニアとタンザニア国境付近のマラ川を渡ることは命がけの一大イベント。
川にはワニが待ち構えている。
おまけに流れが速いマラ川。
とにかく凄まじい番組だった。
軽やかにジャンプして華麗に泳ぎ切るヌーもいれば、ドロドロになった川のフチで足を滑らせて沈んでいくヌー、パニックで仲間たちに踏みつけられ息絶える子どものヌー、ワニの一撃で川に引きずり込まれるヌー。
私は顔をくしゃくしゃにして泣きながら見た。
ヌーたちの命をかけたドラマを見て絶対にアフリカへ行くぞ!と、私は決意したのだ。
さて、この写真のヌーたち。
川渡りの緊張感もパニックも、何にもないね😆
ライオンがそばにいるというのに、ぼんやり草を食べたり、ゾロゾロ歩いたり。
ライオンもヌーを横目で見ながら、別段、何することもなく風に吹かれていた。
まるで、乾いたサバンナの空気を味わうように……。
ライオンは、空腹でなければ狩りはしない。
ヌーたちは、ライオンが狩りをしないことを知っている。
お互いの生命を尊重し共存する、ヌーの群れとライオンの雄。
雄ライオンの優雅な美しさと、ヌーたちの楽しげな姿。
大地と、空と、山と、まさに地球の一部として存在するように溶け込む彼ら。
これこそ、命だ。
命とは、愛だ。
この大地で、彼らと同じ風に吹かれた私は、新しい生命を吹き込まれた気がした。
アフリカの大地を踏んだ人は、多かれ少なかれ、何かを得て帰ってくる。
母なる大地、アフリカ。
私は、ここが生命の源だと確信した。
ありがとう、動物たち。
ありがとう、ケニア。
※次回は、私がサバンナで出会ったすべての動物たちの写真を公開します!