私の原点・30年目のケニア
第6回 誤解だらけのハイエナ伝説
サファリツアーでは、毎日さまざまな種類の動物と遭遇する。普通に日本で暮らしていたら、これほどまでの動物と出会えただろうか?
この経験は私の人生にどれほどの影響を与えたか、筆舌に尽くせないほどだ。
しかし、サバンナではライオンのように毎日会える動物と、一度しか遭遇出来なかった動物がいる。
そのうちの一つが、ブチハイエナ(Spotted hyena)だ。
私たちが出会ったこの2頭は、Mr.Mishackが言うには夫婦とのこと。
ブチハイエナは単独やペア、群れで行動するなど、さまざまな形態がある。
ハイエナはサバンナの掃除屋と言われているように、狡猾で胡散臭いイメージ。
見た目も美しくないし、どちらかというと嫌われ者という感じ。
でも実際に近くで見たら…、なんというか愛嬌のある顔立ちと仕草、可愛い😊😊😊
やはりサバンナで生きてこそ、そう思った。
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私は幼少の頃から動物に興味をもち、小学生の頃にはドリトル先生シリーズなど、動物ものの児童文学を熱心に読んだ。
その興味は大人になってからも続き、1989年放送開始のNHKの自然番組「地球ファミリー」「生きもの地球紀行」を毎週欠かさず見て録画して、何度も見た。
そこで得た情報が私のベースになっている。
1990年放送の『サバンナのハンター ハイエナ タンザニア・ゴロンゴロ火口原』では、これまで知られていなかったハイエナの生態が映像化され、ハイエナの印象がガラリと変わった。それだけに、サバンナで本物に出会えたことは大変に嬉しかった。
ハイエナは後ろ脚が短く、他の肉食動物より走るのが遅い。
狩りをするにはハンディがある。
チーターは時速70キロの瞬足で獲物を捉える。
ライオンは筋力でねじ伏せ相手を倒す。
長距離ランナーのジャッカルはチームワークで獲物を追い詰める。
その技の華麗なこと!
じゃ、ハイエナは?
獲物を横取りするのが、技?
もちろん、サバンナの掃除屋としての役割は重要だ。
しかし、それが彼らの生きる術ではないのだ。
狩りをするには誰よりも劣っているから、誰よりも知恵を使ってあらゆる手段を使う。
それが、ハイエナだ。
この番組で紹介されたハイエナのチームワークは見事だった。
しかし、獲物を取ったそのあとの展開が衝撃的!
こともあろうに、老ライオンに獲物を横取りされてしまうのである!
群を追われた老ライオンとの遭遇は以前にも書いた。
老ライオンは、ハイエナたちを威嚇しながら、獲物を抱え込む。
しかし。
この後、見るものを唖然とさせた。
ハイエナたちは知っていたのだ。
老ライオンに残された命が短いことを。
彼らは、老ライオンを中心にして、一定の距離を保ちながら円陣を組んだ。
そして、ゆったりと座り込んだのである。
囲まれた老ライオンは焦った。
唸って威嚇するも、獲物を咥えてハイエナの円陣を突破する力は残っていない。
獲物に口をつけることもなく、ただただ獲物を抱え込み、最後のプライドで意識を保つ。
この異様な光景は、何日間も続き、やがてライオンの命が尽きる…。
ハイエナたちは、エネルギーを使わず、心理戦で獲物を奪還した。
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私が出会ったこの2頭の視線の先には、ヌーの群。
彼らは次の獲物を見極めていたに違いない。
頭を使い、知恵を使って、無駄を省く。
そう、不器用だからこそ誰よりも努力する。
ハイエナたちの生きる術は、もしかしたらサバンナで生きる最善の策かもしれない。
事実、ハイエナの天敵はライオンだけ。
しかし前述のハイエナたちのように、軍配をあげることもある。
なんという、したたかな奴ら。
不恰好な姿を隠れ蓑にして、実は最高にカッコイイ奴らだ!
To be continued….