私の原点・30年目のケニア
第5回 闘わずして、勝つ。
今回はケニア滞在中、最も印象に残った「ハンティング」のドラマ。
冒頭の写真が獲物のトピ、偶蹄類ウシ科のアンテロープの一種。
地味な雰囲気だよね🤣🤣🤣
で、こちらがハンターのチーター。
さて、このトピ。
あまりに地味で、全く知らない人もいるかも。
検索してみると、NHKの「ダーウィンが来た!」で紹介されているのね。
で、やっぱり地味な動物って紹介されてる😂😂😂
いつものようにサファリカーを走らせて、Mr.Mishackが脅威的な視力で動物を発見。
私たちは望遠鏡で見るが、全く見えない。本当に凄い視力。
Mr.Mishackは、ゆっくりと車を近づけてエンジンを切った。
トピを狙う、チーター。
私はすかさず、2頭を撮影したのだが、Mr.Mishackが、
Wait!
と言って、私を制止する。
彼は、緊張感を野生動物と同等に察知、尋常ではないことを私に教えた。
※私はあまりの緊張感で、結局この2枚しか撮影出来なかった。
肩をいからせトピに照準を合わせ、ジリッ、ジリッと近づくチータ。
トピは、チーターにまっすぐ視線を合わせ、微動だにしない。
私たちは、息を殺して2頭を見守る……。
突然、チーターがくるりと向きを変えた。
何を思ったか、サファリカーに向かって走ってくるではないか! Mr.Mishack が、
Don't move!
と、小声で言う。
私の心臓は口から飛び出そうなほど、バクバクしていた。
チーターはサファリカーの周りをグルグル廻って、トピから隠れるようにして様子を伺う。そして、またグルグルと廻っては、止まる。
グゥウウウ ハァハァ……グゥルルル
チーターの息づかいがダイレクトに聞こえてくる。
チーターは、サファリカーを盾にしてトピの攻撃方法を考えているのか?
さらには、自分の興奮状態をトピに悟られまいとしたのか。
窓から手を伸ばせば触れられるほどの近さにいるチーター。
よく見ると、トピよりも小さな体、まだ若い。
一方、トピの角は立派で成熟したオス。サファリカーに隠れるチーターから視線を外すことなく、じっとこちらを見ている。ぴくりともしない。
しばらくしてチーターは、グルグル廻るのをやめた……。
そして、跳びはねるようにして、その場を去っていった。
え?!
トピの視線は、チーターの背中を追っている。その場でぴくりともせず。
チーターの姿が遙か遠く見えなくなって、トピはようやく歩き出した……。
チーターの瞬足は時速70キロ、その威力で突進すれば逃げるトピを背後から攻撃して倒すことができる。
だが、もしもトピが背中を見せなかったら?
チーターの瞬足を逆手にとって真正面から角を突き刺すことができるはずだ。
チーターは、トピが一枚上手と判断した。
トピは、この勝負に自分の命を賭けたのだ。
逃げるのではなく、真っ向から挑んだのだ。
闘わずして、勝つ。
見事な勝負だった。
トピもチーターも。
勝ったトピの度胸と貫禄、そして、チーターの潔い負け。
私は心が躍った。
ただただ逃げるだけと思っていた草食動物の生きるための知恵と度胸。
決して勝負を諦めない、自分を信じる姿。
私は今も、くじけそうになった時、トピの姿を思い出す。
壁にぶつかった時はチーターの潔さを思い出す。
そして呟く。
諦めるな、勝負はまだ終わったわけじゃない……と。
To be continued…..