70年代、その最後の年に16歳だった私は-Edge of Sixteen-そう、崖っぷちで生きていた。
今回の「なぜ?」は、Nに対する違和感だ。
外見や噂とは裏腹な素直で繊細なNは、私から見ればゴロつきとかチンピラとかいう不良のイメージはない。
それよりも、彼の内面の潔癖さが際立っていた。
しかし、頑として不良を貫くNは「退学」が目前だった。
あと1回違反をすれば、レッドカード、退場。
そのギリギリのところで、Nは私と出会った。
Nは、私と付き合うようになってから、マジメに学校に通って勉強をするようになったと教師から聞いた。暖かく見守ってくれる教師もいて、平和な学校生活を送るようになっていた。
放課後は一緒に帰るのが日課で、Nのバイト先の喫茶店で過ごしたり、街でブラブラしたり、Nがバイトの時は修業中のメニューを作って、私に試食させたり。
N「今日はずっとキャベツの千切りだぜ。ちょっとはうまくなったか?」
と、照れながらキャベツの千切りだけを持ってきたり(笑)
ある土曜日の午後、一緒にレコード屋に行った。
N「バイト代出たからさ、なんか好きなの買えよ」
私「え!? いいの?やった!」
あの頃、LPレコードは2500円、高校生の小遣いでは1枚買うのも大変だった。
だから、私は嬉しくて嬉しくて、何にしようかなーと物色を重ね、
私「これにする!」と、1枚のLPをNに渡した。
N「これか、ナンダコレ?」
私「いいから!」
買ってもらったレコード、Queenの『JAZZ』
当時のQueenの新譜だ。
ジャケットデザインと『JAZZ』というタイトルに惹かれ、期待でいっぱいだった。
Nはちんぷんかんぷんという顔でレコードジャケットを眺めた。
私・独白(あー早く聴きたい、家に帰りたい〜〜〜)
いい気なもんね、せっかく買ってもらったのに…。
QueenのJAZZについては、Queenファンにまかせるとして😂、当時の私がどれだけ失望したかはいうまでもない🤣🤣🤣失望というより、混乱に次ぐ混乱😵😵😵
今でこそ、Queenが新境地を開拓した意欲作と言われているほど、すごいアルバムだけど16歳の私には理解できなかったな。
こうしてNと一緒に過ごす時間を重ねるうちに、Nがなぜ不良を決め込んでいるのか、わかってきた。
それは、孤独。
家族の中で、自分だけ阻害されている、孤独だ。
父、後妻の母親、腹違いの幼い弟、この家族は、彼にとっての家族じゃない。
耐えられない孤独。
その孤独感を埋めるために、仲間を引き連れて、喧嘩したり、万引きしたり、ナンパしたり…
そして、Nは私に同じ匂いを感じたのだ。
私の家族もバラバラで、孤独で、誰にも頼ることができない崩壊した家族だった。
唯一、信頼していた姉は、すでに大学で東京へ。
私も早く高校を卒業して、東京に行くことが目標だったのだ。
誰にも頼らない。
独りで生きてみせる。
私とNの、ギリギリの崖っぷち、最後の70年代。
お互いの孤独感が融合したとき、言葉には表せない、二人だけの平安が訪れた。
私は、Nと一緒にいる時間が唯一、生きていると感じられた…。
To be continued…