80年代を代表するROCKバンドと言えば、AC/DC、VAN HALEN、Guns N' Roses…だけど、私はどれも聴いてない。83年にU2のアルバム「War(闘)」に出会うまで、ROCKから遠く離れ、音楽への情熱も冷めていた。
1980年、
あの2月の出来事がなければ、今頃私は彼と幸せな家族を育んでいたのだろうか…
さて、あの2月の出来事の顛末はこうだ。
Nは、H先生と話をつけたと言って、泣いてる私をなだめた。
N「俺…、学校辞める」
私「何で? 何でやめなきゃいけないの? だってアイツ、勝手に部屋入ってきて、横暴だわ。家に帰ったら何やったって自由じゃないの。間違ってる!」
N「…もう話はつけたから。お前、今日は帰れ。俺、あの人(継母)と話さなきゃなんねぇし。一人で帰れるか? あとで電話するから」
ギューっと抱きしめてくれたことや、私がぐしゃぐしゃの顔してるのを見て笑ったことまではおぼろげに覚えているが、そのあとどうやって駅まで行って帰ったのか覚えていない。頭が混乱して真っ白で、もう立っていられないほどだった。
その夜、
Nは電話をくれなかった。
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Nは、高校3年進学を前に退学させられ、私は何の処分もなく高校2年の春を迎えた。
二度と学校でNの姿を見ることもなく、バイト先の喫茶店も辞めてしまい、もちろん家も出てしまって、私はNと会う術を失ってしまったのだ。
どこへ行ってしまったの?
私をおいて、どこへ行ったのよ。
空虚に過ぎていく日々。
何も楽しくない。
みんな嫌いだ。
嫌いだ!
ある日、帰りの電車でNの舎弟だったKと偶然乗り合わせた。
私「どこにいるのか、知ってるよね? 教えてよ」
K「……。」
私「ねぇ、知ってるでしょ? 教えてよ!」
K「Nが『もう、俺のことは忘れてくれ』って言うんだよ。だから、お前も忘れなよ」
私「そんなの、ひどいよ! 私、何でこんなことになったかわかんなくて…」
K「お前…、もしかして聞いてないのか。Nが全部ひっかぶって退学したこと」
え? 何それ。どう言うこと?
全部ひっかぶったって。何のこと?
K「お前、何もなかっただろ? 停学とか、謹慎とか」
私「うん」
K「Nのヤツ、お前には何にもするなって、Hの野郎と取引したんだ。聞いてなかったのかよ…」
Kは呆れた顔でため息をついた。それから、Kはポツリポツリと話し始めた。
今は一つ年上の女のアパートで同棲してること、その女は同じ高校で裏番だったY子で、Nが1年の時に付き合ってた腐れ縁の女だとか。妊娠させておろしたことがあったとか。今は水商売やってて、NはY子に食わせてもらってるとか…。
私は、Y子のアパートの場所を聞き出し、何としても真相を確かめたかった。
そして、夜、私は家をこっそりと抜け出し、終バスに乗って駅まで行った。
駅裏の安アパート。木造2階建で螺旋階段がある。その2階がY子の部屋だ。
私は表札を確かめて、階段の下でNが帰るのを待った。
すっかり春の陽気だったが、夜はまだ冷える。薄着をしてきたことを後悔しながら、ひたすら彼の帰りを待っていた。
すでに、夜中の2時をまわっていた…。
To be continued…