Edge of Sixteen のタイトルをもらったEdge of Seventeen は、1982年にリリースされたStevie Nicksの大ヒット曲。この曲の世界観は私を16歳に引き戻し、17歳のNと対峙させた。
印象的なリフ、
Just like the white winged dove
Sings a song Sounds like she's singin'
Whoo-whoo-whoo
は、暗い森の中を真っ白な鳩が希望に向かって飛んでいくイメージ…。
あの頃、私とNは必死に羽ばたこうとしていた。
そろそろ私とNのストーリーも終盤。最後はしつこくなっちゃうから😭2回に分けてアップします!
1980年の春、暗闇の中でNとY子の帰りを待つ私は、もう後には引けない、その一心で震えながら待っていた。
遠くから人影が見えた。
Nだ。
N「おい! 何してんだ、どうした? 大丈夫か?」
Nは血相を変えて私のそばに駆け寄った。
寒くて凍えて歯がガチガチ震えて、涙で前が見えなくなった。
N「待ってろ、ちょっとアイツに話してくるから」
Nは、少し離れてタバコを吸ってるY子に何かを話すと、Y子はアパートの部屋に入って行った。
N「いつからここに居た?」
私「10時くらいから」
N「4時間もここに座ってたのか」
私「……。」
N「腹減ったろ?この近くに朝までやってる居酒屋があるから、行こう。俺も腹減ってるし。な?」
私は、うん、とうなづいてNの後ろを歩いた。
その広い背中を見ながら、彼がなぜ私に何も言わずに姿を消したのか、わかったような気がした。
彼の、こうと決めたら曲げない性格、一心に貫く精神力を私は知っていた。
だからあの日、あの2月にH先生に引き裂かれた悲しい日から、二度と私には会わないと決めたに違いない。
私のために貫いたことが崩れてしまった以上、私から離れるしか方法を見つけられなかったのだ。
居酒屋はカウンターだけの狭い場所で、私たち2人をみんなが席を譲りながら座らせてくれた。
N「ビールくらい飲めるだろ?」
私「うん」
Nはつまみを適当に注文してから、コップにビールを注いだ。
N「なぁ、ごめんな。こんなことになって。もう、俺なんかと一緒に居ない方がいいんだよ。わかるだろ?」
私「わかんない!だって、一緒に暮らそうって言ったじゃない!」
N「それは俺がちゃんと卒業して、お前が大学行って、その時の話で、もう、ダメなんだ」
私「……あの人のこと、好きなの?」
N「アイツはどうでもいいんだ。俺がまだアパートかりられねぇからさ、世話になってるだけだから」
Nは、カラオケ歌おうと言って、マスターに曲を注文した。演歌のイントロ、Nはマイクを持って歌い出す。
N「お前は2番歌えよ!」
そう言って私にマイクを渡す。何の歌だったか、さっぱり思い出せない。
Nはやたら明るくて、ちょっと酔っぱらって上機嫌だった。
居酒屋から出ると、すでにうっすら明るくなっていた。アパートのドアを開けるとY子はいなかった。部屋の壁ぎわのセミダブルのベッドに
N「ここで寝な。俺はあっちで寝るから」
やっとの思いで会えたのに、何一つ納得できていない。Nの言葉に一片の真実も感じられない。こんな気持ちで寝られるわけがなかった。
私「寒い。こっちにきてよ。ねぇ、寒いよー」
私は大声で叫んだ。
N「しょうがねぇな。子どもみたいなこと言って。今日だけだぞ」
Nはベッドに入って、私を抱きしめた…。
私は少し眠って、昼前にはアパートを出た。
Nは、階段を降りて私を見送ってくれた。
サヨナラ。
ゴメンね…
To be continued….