マカマカ翻訳出版 破棄。
2011年3月11日。
私は、横須賀の自宅2階で仕事をしていた。
みつ子はいつものように、ソファの上のオレンジの特大クッションで寝ていた。
みつ子は、推定17歳になっていた。
あの日。
これまでに経験したことない地震、長時間揺れ続けていたことで恐怖が増幅した。
3月8日はお嬢DONの命日だったので、キャビネットの上の写真の近くに花を飾っていた。
大きなガラスの花瓶に色とりどりの花。お嬢DONは豪華な花がよく似合うから。
いきなり突き上げるようなドン!っという衝撃とともに部屋がものすごい音を出して揺れた。
私は、クッションの上で寝ているみつ子のそばに駆け寄り、しっかりと抱きかかえた。パニックで走り出してしまったらと無意識にぎゅ〜っとみつ子の手を握りしめていた。
お嬢DONの写真と一緒に、ガラスの花瓶がゆらゆらと揺れている。
今にも倒れそうな勢いで、揺れている。
私はみつ子の手を握りしめてしゃがみこみ、キャビネットの上から花瓶が落っこちないようにと凝視していた。
ようやく揺れがおさまって、私は真っ先に花瓶を床におろした。
みつ子はというと、何事もなかったような顔をしてキョトンとしていた。
投薬治療のせいか年のせいか、昔は地震や雷で走り回っていたのにすっかり落ち着いている。
地震が少ないと言われている横須賀では大変な事態だったが何かが壊れたというわけではなく、被害は少なかった。
しかし、その後の世の中の変化は、とてつもないことになっていくのだ。
東京も危険とか、いろんな情報が飛び交い、混乱状態に陥っていく。
そして。
1月から進めていたマカマカ絵本シリーズ中国語翻訳出版が暗礁に乗り上げてしまうのだ。
中国の出版社の現地から、すぐに中国に戻るようにという指示が出て、みんな日本からいなくなってしまったのだ。
この混乱状況下ではメールでの連絡も取れず、毎日不安でたまらなかった。
やっと中国に帰った担当者と連絡が取れたと思ったら、
この話はなかったことに…と。
マカマカ絵本シリーズ 翻訳出版破棄。
悲しかった。
悔しかった。
地震さえなければ…と。
打ちのめされた気分だった。
そして、追い討ちをかけるように、決まっていた仕事がどんどん中止に。
地震で出版業は大きく傾いたのである。
東北の地に多い製紙工場が稼働できないのだ。
印刷する紙が足りないのだ!
楽しみにしていた、アメリカの超有名キャラクターのMOOK本企画も中止。
おまけのランチボックスデザインを依頼されていた。
このキャラクターのライセンス関連説明会にまで行ったのに…。
このまま出版の仕事がなくなったら、どうやって生きていけばいいのだろう…。
私は途方に暮れていた…。
To be continued…..