1986年。
U2もPrinceも世界の頂点に立とうとしていた。
私は、彼らの輝かしい軌跡とともに青春時代を送り、リアルタイムで流れてくる彼らの音楽に感動していた。
おそらくあの頃、私はもうNの面影を忘れ、ROCKと猫と、そしてオートバイの生活を満喫していた。
時々、恋愛擬きの感情に振り回されることもあったが、今、冷静に思い起こせば、愛のかけらもない、から騒ぎだったことが手に取るようにわかる。
誰ひとり愛してはいなかった。
だから、どの記憶も砂漠に埋もれ消えてしまった。
さて、目黒に引っ越して1年、TSUNもBOSSもオス猫らしく立派になって、しかし相変わらず取っ組み合いのケンカは続いていた。
もうこれはケンカというよりも日課なので、それが終われば寄り添って寝たりして、私の心配をよそに仲良し兄弟になっていた。
2匹とひとりの平和な生活に、ある日、バイト先の黒服B君から、「猫、もらってくれないかな?」と、相談された。B君のおばさんの家で飼ってた猫が子猫を産んだ。しかし、おばさんは腰の調子が悪く子猫の世話をするのが大変になってきたという。
私は二つ返事でオッケーした。
B君が駅まで向かえにきてくれた。
私は子猫を入れるための籐籠を持って、おばさんの家に入った…部屋にコタツがあって、段ボールの箱の中に小さな子猫が3匹、みぃ〜みぃ〜と鳴いている。まだ産まれて1ヶ月くらい、母親から離すにはちょっと早いのでは?という感じだ。
籐籠の蓋を開けて、いつでも入れるようにしておいたら、なーんと、母猫の三毛猫がちゃっかり籠に入ってる。その姿の可愛さに3人で大笑い。
「このままお母さん猫もらって行こうかな」
そう思わせるほど、母猫は美猫だった。
そして、3匹のうちの1匹の三毛猫を決めて私はそーっと籠に入れた。
蓋をするとみぃ〜っと大きい声で泣く。
母猫はパニック状態になって、大騒ぎ。おばさんが
「早く早く、連れていって!」
私とB君は車まで走った。
母猫の三毛は、網戸に突進して追いかけようと必死。
網戸に張り付いて、ずっと叫んでいた。
B君は無言で車を駅まで走らせた。
2人とも、母猫の必死な姿を見て泣きそうだったんだ。あんなに子猫を愛してる母猫から、私たちは子猫を奪ってしまった。その罪悪感で、胸が詰まって何も言えなくなってしまったのである…。
東武東上線から日比谷線の中目黒まで一本、中目黒からバスに乗り、家に着いた。
今日から、2匹はお兄ちゃんだよ!
ちっちゃい妹を連れてきたよ。
2匹は籠の中でみぃ〜と鳴いてる子猫を
「ほぉー」(と言ってるように見えた)
静かに眺めていた。
私はこの三毛猫に、
DON
と命名した。
そう、この近所でBOSSよりも強い立派な猫に育ちますように!と願いをこめたのだ。
その願いは、
あっという間に成就するのであーる👍
To be continued….