2006年7月に、突然、倒れたみつ子。
その翌日には激しい痙攣発作を起こして、緊急入院。
みつ子の病気は、「特発性てんかん」というのものだった。
「特発性てんかん」とは、具体的な原因が見当たらないのに、てんかん発作を起こす疾患。原因は遺伝説が有力だというが、はっきりしたことはわかっていない。
「症候性てんかん」というものもあり、これは脳腫瘍や脳炎、外傷による脳の損傷、水頭症のような脳の病気、感染症による脳の障害など、何かしら脳に異常が起きたことが原因のてんかんである。
前触れもなく起きるてんかん発作。
私は、みつ子のてんかん発作が怖くてたまらなかった。
痙攣と硬直は今にも死んでしまいそうなくらい激しくて、背中をさすることしかできないのである。
つだ動物病院の院長は、発作が起きた時の坐薬を処方したが、発作が起きた時に、上手にできなかった。そのため坐薬はやめて、抗てんかん薬が処方された。
しかし、この薬の副作用は、とにかく1日中ボ〜ッっとしてしまうことだった。
てんかん発作のきっかけになるような、気分の高揚や刺激を与えないことが基本で、そのため常に寝ているか、ぼんやりしている状態なのである。
みつ子の活発な性格と180度真逆、ただぼんやりとしているだけなのだ。
みつ子は気が強い、活発な猫だ。
薬を飲んで、ただぼんやりしていることが、この子にとって幸せなことなのか?
快活に走り回って、私と追いかけっこしたりすることが楽しかったはずだ。
それなのに…。ただ、ぼんやりと1日を過ごすなんて…。寂しすぎる。
投薬治療を開始した当初、いつもフラフラしていて、ごはんを食べるときも頭を支えることができず、フードの中に顔ごと突っ伏してしまうほどだった。
あまりにも哀れで、別人(猫)になったようで、心が折れた。
その後、薬の量を調整しながら食欲増進剤と併用した。
ある日のこと。
2階の仕事部屋でいつものように仕事をしていると、みつ子が隣のベッドルームから、そろりそろりと歩いて廊下を歩いていくのが見えた。まるで、私に気づかれないようにと、コソ泥のような歩き方だったのだ。
「みっちゃん、どうしたの?」
と声をかけると、
「ギャっ!」
と、短く叫んで尻尾を太くして、大急ぎで階段を駆け降りて行ったのである!
「みっちゃん、どうしたの????」
と、私はみつ子の後を追うと、
「ギャ〜っ!」
と叫びながら、全速力で逃げていくのである!
そして、母の部屋に駆け込み、カーテンの裏に隠れたのだ!
一体、何が起きているのだ!
何か恐ろしいものでも見たように、私から逃げたのである!
「みっちゃん、どうしたのよ…」
カーテンをゆっくりあけてみると、みつ子はうずくまり口から白い泡を吹きながら、ガタガタと震えていたのだ…
私は困惑してしまい、どうしていいのかパニックになった。
とにかく私を怖がっているので、みつ子を母に託して私は2階の部屋に行った。
しばらくして、ようやく落ち着いたというので様子を見にいくと…
みつ子は、お嬢DONのそばにピッタリ寄り添ってうずくまっていた。
DONは何も言わず、まるで労わるようにみつ子のそばに座っていた。
この不可解な出来事は、数日、続いた。
私の顔を見て、逃げ隠れるみつ子。
その間、みつ子はお嬢 DONの側から離れなかったのである。
この一連の騒動は不可解過ぎて、私はみつ子に精密検査を受けさせるため横浜の総合病院に行った。MRI検査である。
結果、脳に損傷はなかったが、脊髄に問題があり脳からの伝達が遮られていることがわかったのだ。てんかん発作だけではなく、後ろ脚の反応も若干の遅れが出ているという。
しかし、あの不可解な出来事は解決しなかった。
あれきり、私を怖がることはなくなったのだが、今も不思議でならない。
みつ子の病気は、投薬治療で一生付き合っていくしかないという結論で、発作が出なければ、普通に生活ができているのである。しかし、一旦発作が出ると入院することもあり、予断を許さない病気だった。
みつ子の病気発覚で、心が落ち着かない毎日だったが、独立後の仕事は順調だった。
そして、「白いおばけのスー」第2弾企画がスタートしたのである…
To be continued…