愛の時代 里中満智子 作
ー愛していますー
一生に一度しか言うまいと心に決めたこの一言を、
今、私はあなたに告げました。
これは愛の時代の冒頭シーン。主人公・由希のアップと独白から始まる。
いきなり「愛しています」、タイトルも愛の時代って言うだけに。
私は、この冒頭シーンをジッと見つめたまま、ページをめくるまで5分くらい固まってたよ。
そもそも「愛しています」という言葉を、誰かに真剣に伝えたことがあるのかどうか、日本語の「愛しています」というフレーズ、「愛」という言語の歴史の浅さを考えると、このシーンをどう解釈すればいいのか?などと、ぐるぐるしてしまったのである。
ちなみに、日本語の歴史において「愛」という言語の歴史は浅く、明治時代からと言われていて、西洋の書物を翻訳する際に「愛」という言語を当てた。そのくらいの歴史なのだ。聖書が日本に入ってきたのは明治よりも遡るが、聖書で頻繁に使われる「愛」という言語は当時、翻訳することが出来ず「とても大切なもの」という意味で「御たいせつ」と翻訳されたらしい。だから英語圏の「I love you」は多くの感情を含んでいるにもかかわらず、日本語の「愛しています」はあまりに浅い。
はたして、里中満智子さんは「愛」を大きな意味と捉えて、あえて冒頭、主人公に語らせたのか、そして、一体誰にこの言葉を告げたのか、そしてなぜ一生に一度と決めたのか…とのめり込んでしまう冒頭シーンなのだ!
そこで、読者の皆さんに聞いてみたい。これまでの人生で誰かに、愛していますと真剣に伝えたことがありますか?
私は、ある。
一度だけ。
いや、これは正確ではない。
正しくは、過去に一度。
そしてクリスチャンとして一度、でもこれが最後…つまりは永遠に。
愛の時代、興味深いストーリーについては次回にしよう!