一難去ってまた一難…
引き起こしの試験をスルーして、大型自動二輪免許の教習を受けようとしたことで、事務所に確認に行った指導員。このまま教習を受けられなくなるかもしれないと、私は不安な気持ちで立ち尽くしていた。
ゴロンと転がったCB750を見つめながら、自分が情けなくて涙が出てきた。
そうだよ、中型免許の時もCB400が起こせなくて、小型免許からやったんだ。
でも、あれから20年。
CB750は無理だよ。起こせない。
鼻をすすりながら佇んでいると、事務所からK指導員が戻ってきた。
泣いている私を見て、うろたえるK指導員。
どんな話をつけてきたのか、いまだ謎だが、結局、引き起こしをスルーして教習を受けることが許された。
「じゃ、サイドスタンドはらって乗車してください」
と、明るくK指導員は言った。
「えっ?! 私、そんなことできません!」
「でも、やらないと免許取れないよ」
「え〜っ! だって、倒れちゃいます」
「大丈夫、倒れないから」
K指導員の笑顔が呆れ顔に戻っていく…
サイドスタンドを外して、オートバイに跨るのは、支えるものが自分の体だけということである。
ビッグスクーターに乗り慣れている私には問題外である。
私はCB750の重量を体で支えて跨るなんて、天地がひっくり返っても無理だと思った。
「どうしてこんなことしてまたがらなきゃいけないのでしょうか? サイドスタンドかけたまま乗った方が絶対安全です。それに〜〜あ〜だこ〜だ○△◇…」
なんとしてもやりたくない一心で、ありとあらゆる屁理屈をこねていた。
K指導員は、呆れ果ててこう言った。
「原田さんだけにやれって言ってるワケじゃないんですよ」
私はさらに屁理屈をこねる。
「とにかく、サイドスタンドはらって乗車してください」
やらなきゃだめか。
私は観念して、呼吸を整え、一気に右足をふりあげてまたがった。
あ〜、乗れた……。
倒れなかった。
「できるじゃないですか! やればできるんです」
ようやくここで、CB750を走らせる体制になる。
動き始めたとたんに、さっきまでの屁理屈こねこねは棚にあげて「楽しい〜!」とニコニコしながらコースをグルグル走る。
走っちゃえば、こっちのもんよ。
全然怖くないんだ。不思議だ〜。
空が暮れ始めて、うっすらと暗くなってきた。
夕焼け、きれいだな〜。
こうして、私の教習初日が終わったのである。
この日の醜態で、私は教習生ブラックリストに入ったに違いない。
これからどんなことが起きるのか、前途多難なスタートだった…。
To be continued …..